ちはやふる -下の句- (2016):映画短評
ちはやふる -下の句- (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
しのぶちゃんの一人勝ち。
『上の句』後の予告が、興奮のピーク。去年の『ソロモンの偽証』に近いものを感じさせる、前作からの落差だ。全国団体戦メインの展開に絞りながら、作り手が原作の名セリフやシチュエーションを回収することに精一杯なのが露骨に出ている。そのためか、大会シーンの熱さもあまり感じられず。さらに、千早を始め、『上の句』ではキラキラ輝いていたキャラクターたちも、どこか影を潜めてしまったことも悔やまれる。その理由にはどんなに瑞沢かるた部の面々が束になっても、クイーンしのぶを演じた松岡茉優の存在感に太刀打ちできなかったことも挙げられる。とにかく、完全に広瀬すずを喰う松岡の勢いに圧倒される一作であることに間違いない。
広瀬すず17歳の動物的な瞬発力と伸びやかな身体に魅せられて
TVシリーズ第1話の直後、いきなり最終話を迎えたかのようなフラストレーションに襲われる“もどかしき前後編分割問題”は大手配給会社が知恵を絞って改善すべきだが、興行的打算はともかく、本作は恋のベクトルの絡まりあいと仲間の結束を描くバランス配分も程よく、各ショットが実に心地よくデザインされた青春映画として爽やかな余韻を残す。ラスボス松岡茉優の貫禄は流石だが、何よりジャージから着物への振り幅を往き来する、広瀬すずの表情が多面的で豊かだ。子供のようながむしゃらさと、凛とした少女の魂の同居。17歳の動物的な瞬発力と伸びやかな身体を収めた映像が傑出している。