大地を受け継ぐ (2015):映画短評
大地を受け継ぐ (2015)風評被害という言葉が象徴する日本社会の偽善
原発事故によって先祖代々の農地を汚され、父親を奪われた男性とその母親が、東京から訪れた若者たちに、福島の農家が直面してきた理不尽で過酷な現実の数々を語る。
ほぼ全編に渡って親子による独白と、その言葉に耳を傾ける若者たちの姿だけで構成された約90分。しかし最後の最後までスクリーンから目が離せない。魂を込めた言葉の力というものを思い知らされる。
そして、原発だけでなく日本の農産物の安全性そのものにも大きな疑問が投げかけられる。風評被害という言葉が象徴する偽善。その根底にあるのは、臭いものに蓋をして見ぬふりをする日本社会そのもののあり方だ。福島の問題はその氷山の一角に過ぎないのかもしれない。
この短評にはネタバレを含んでいます