奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ (2014):映画短評
奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ (2014)ライター2人の平均評価: 3.5
アウシュヴィッツの記憶は”遠くなりにけり”なのか?
落ちこぼれの学生たちがアウシュヴィッツを通して、学ぶことの重要さと、日々の生活を改める。
実話で、”良い話”ではある。だが、しこりも残る。
パリ郊外の高校で、多人種の生徒たちが机を並べているクラスが舞台だ。ユダヤ系も見える。
なのに、全くもってその過去に関する知識も興味もゼロどころか、マイナスのところから物語が始まる。
より感動を呼ぶ為の落差なのか。はたまたこれが現実か。
『帰ってきたヒトラー』を観賞した時にも感じたが、70年前は遠き過去で、その歴史を伝えていくことの困難さを痛感する。
そこにはつい、今の歴史教育に問題があるのではないかと考えてしまうが…。
教訓映画としては噛みしめ甲斐アリ。
多民族社会の素顔を映し出すフランス版女金八先生!?
学校もさじを投げた落ちこぼれ学級の問題児たちと、そんな彼らを見捨てず叱咤激励する女教師が、全国歴史コンクールへの入賞を目指して一致団結していく。実話を基にした作品だ。
フランスの移民政策を反映するように、人種も宗教も様々な生徒たち。ここでは日本人的な“郷に入っては郷に従え”の論理など基本的に通用しない。多民族社会における共存共栄の難しさが浮かび上がる。
そんな彼らをまとめ上げるため、女教師は人類最大の悲劇であるホロコーストを研究テーマに選ぶことで、民族の違いを超えた普遍的なヒューマニズムを学ばせる。悪ガキたちの屁理屈にも動じない女教師の頼もしさと軽妙なストーリーの語り口が心地よい秀作だ。