ダゲレオタイプの女 (2016):映画短評
ダゲレオタイプの女 (2016)黒沢清監督がフランスで撮った美しくも哀しいゴシック幽霊譚
底なしの恐怖と狂気を描いた衝撃作『クリーピー 偽りの隣人』に続く黒沢清監督の最新作は、一転してフランスで撮影された美しくも哀しい正統派のゴシック幽霊譚だ。
日常と非日常の隙間にポッカリと空いたような、ある種の異空間で繰り広げられる禍々しき物語という点では『クリーピー』と同様だが、しかしエレガントで気品の漂う叙情的な世界観は極めて対照的。ホラーよりもロマンスの要素が濃厚である。
ジョルジュ・フランジュ、カール・ドライヤー、ジャン・コクトーといったヨーロッパの巨匠たちを彷彿とさせる風格は、シネフィルたる黒沢監督ならではの醍醐味。アートフィルム色の強さが賛否を分けるポイントだとは思うが。
この短評にはネタバレを含んでいます