母の残像 (2015):映画短評
母の残像 (2015)“男性学”の時代のホームドラマ
『アメリカン・スナイパー』といった米国製、同じ北欧でも『ある戦争』など、PTSDの問題も含め「戦場に行く父」から家族の形を逆照射する例は多いが、「母」というのは初めて観た。この残された男3人の家族の肖像には現代的な不安が絶妙に反映されていると思う。おそらく父より母の不在の方が家族は機能するのが難しい。筆者は父親としても息子としても何度も胸を突かれる場面があった。
特に中二病全開の次男(D・ドルイド)をめぐる描写は秀逸で、兄からの助言、好きな女子との一夜には男子的なロマンもたっぷり。監督はラース・フォン・トリアーの甥だが、資質は全く異なり、良い意味で「普通」の優しさと明晰さに貫かれた秀作だ。
この短評にはネタバレを含んでいます