ANTIPORNO アンチポルノ (2016):映画短評
ANTIPORNO アンチポルノ (2016)嘘で塗り固められたニッポンを射る“メタポルノ社会映画”
健康的な裸体を晒したまま人気作家・京子は言葉を発しまくる。時間に追いまくられ、混乱するアイデンティティ。そこは極彩色で虚実ないまぜの書き割り世界。 解体された時間軸の中、内面が暴かれていく。天井が突如切り裂かれ虚構が侵蝕される心象や、肉体に色とりどりの絵の具が浴びせられる前衛表現に目を瞠る。ネットにエロ動画が氾濫し、アイドルへのポルノ的な視線が蔓延する一方、フィジカルな恋愛が後退した国で、ロマンポルノを再生させる企画に疑義を呈した園子温の戦術は刺激的。性が消費されまくるニッポンで生きる不自由さへの問い掛けだ。脱がされていくのではなく、徐々に着せられていくメタ・ポルノ社会映画でもある。
この短評にはネタバレを含んでいます