息衝く (2017):映画短評
息衝く (2017)明らかに力作、真摯な熱作
世間からはカルト視もされるゴリゴリ左派のアングルから、震災後の日本社会の位相をじっくり見据えようとする試み。青臭い、といなす向きもあるかもしれないが、「加齢した若者」が抱える鬱屈は現代の成熟を考えるうえで重要な主題の一つだろう。映画の作りはごつごつして生硬だが、そこにも作り手の生理、血肉が通っている気がする。
キャラクターとして強いのは失踪して隠遁生活を送っている元教祖の「森山さん」(寺十吾)。この人のやたら人懐っこく、独善的で説教好き、他者に対してアメとムチを本能的に使い分けるプチカリスマ感は非常にリアルだと思った。彼の登場からエンディングに向けては特に異様な迫力が漲り、余韻も深い。
この短評にはネタバレを含んでいます