夏、至るころ (2020):映画短評
夏、至るころ (2020)「幸せとは」を繰り返し問いかける
高校3年生という人生の分かれ道の話は、素直な感情や思い出から生まれたなら、何度語られても心を打つ。しかし今作は、どうも頭でっかちな感が否めない。「幸せ」という言葉が、ありとあらゆる登場人物の口から100回くらい出る上(小学生まで幸せとは何かを説教する!)、青い鳥やら立原道造まで出てきて、観客に自らテーマを汲み取らせる余地を与えないのだ。「本は旅だ」「お前が最初に見た海を見たい」など、浮いた感じのするセリフも気になる。太鼓や夏祭り、町の食堂といった情景は、その土地らしい情緒や季節感があって、良い。同じように全体も背伸びせずにアプローチしたら良かったのではと思う。
この短評にはネタバレを含んでいます