影裏 (2020):映画短評
影裏 (2020)“歩く傷”が求める真実
ポン・ジュノ監督が『怒り』を観て、「すぐに泣きそうな“歩く傷”」と譬えた綾野剛が、やっぱり泣きそうに佇む。そして、松田龍平は妖しさと哀しさの二面性でスルリとかわし、中村倫也はいきなりシーンをかっさらう。100ページにも満たない原作の行間を読ませるように、淡々と展開し、134分の長尺を使っても、いろいろと観客に投げかける。そんな男たちの物語は、大友監督の『秘密 THE TOP SECRET』から、さらに踏み込んだ印象が強く、黒沢清監督作でおなじみの芦澤明子による撮影は、震災前後の不穏な空気を捉えながら、川釣りのシーンでは『リバー・ランズ・スルー・イット』ばりに眩い美しさを放つ。
この短評にはネタバレを含んでいます