一度も撃ってません (2020):映画短評
一度も撃ってません (2020)いつまでも青春の幻影を追い求める男の悲哀が滲む
主人公は伝説の殺し屋を気取るちょいワル爺さんだが、その正体はただの売れないハードボイルド小説家。実は一度たりとも人を殺したことのない小心者だ。そんな彼が自らヤクザのヒットマンに命を狙われる事態に陥ってしまう。コツコツと真面目に働いてきた奥さんに生活を依存しているくせに、飯のタネにもならない男の美学にこだわり、いつまでも大人になれない老人の悲哀を描いたコメディ。ホント、男ってバカよねえ…と呆れつつも、どこか憎めなく感じるのは、誰しも心のどこかで青春時代の幻影を追い求めているからだろう。この脚本を書いたのが『処刑遊戯』や『野獣死すべし』の丸山昇一であるという事実も興味深い。
この短評にはネタバレを含んでいます