蒲田前奏曲 (2020):映画短評
蒲田前奏曲 (2020)ライター2人の平均評価: 4
ようやく日本でも#MeToo映画が!
オムニバス映画は各監督が好き勝手作るので、1本の作品として見るとまとまりがなく残念な結果に終わることが常。だが本作は貴重な成功例だ。作風の異なる4監督を起用しつつ、描かれるのは公私に渡って停滞期にある”売れない女優マチ子”の日常。テーマは現代女性の生きづらさで、とりわけ芸能界にいまだはびこるパワハラ&セクハラの実態を赤裸々に描き、業界にパンチをかましているのは痛快。映画界における#MeToo運動に関して日本は完全に取り残された感じであったが、ようやく出てきたことを歓迎する。主演女優・松林うららの、蒲田をロケ地に選んだセンスといいプロデューサーとしての今後に期待。
企画モノの域を飛び出たインディーズ監督総当たり戦
一人の売れない女優を主人公にしたリレー形式ながら、中川龍太郎、穐山茉由、安川有果、渡辺紘文という俊英監督の作家性が出まくり。彼らの新作として火花を散らしている感が楽しめるうえ、この並びから分かるように、どんどんアクが強くなっていくのが確信犯的で面白い。そのため、“伊藤沙莉&福田麻由子、久々の共演作”ぐらいの軽い気持ちで観ると、後半では「今、何を観てるんだ?」とボコ殴りに遭う可能性アリ。と同時に、今のインディーズ映画界における多様化を目の当たりにするだろう。主人公を演じる松林うららプロデュースによる、むちゃくちゃ意欲的な企画だが、明らかにタイトルで損している。