43年後のアイ・ラヴ・ユー (2019):映画短評
43年後のアイ・ラヴ・ユー (2019)ライター2人の平均評価: 2.5
”美しい恋”に潜むワナ
アルツハイマーになった元恋人会いたさに、ひと芝居打って同じ施設に入って想いを伝える—。共通の思い出である演劇の名シーンを引用したアートな雰囲気と、いい歳した爺さんのお戯れに笑わされ、大きな心で見てしまいがちだが、ちょっと待った! 元恋人側の意思は? 個人の尊厳は? そもそも43年前、元恋人が別れを決めたのはそれ相応の理由と決断があったはず。なのにアルツハイマーだから良いだろうとそれを無視して再接近するのは、ストーカーと同じくらい暴力的な行為だ。高齢化社会になり高齢者がやんちゃしたり認知症をモチーフにする作品が多いが、それを免罪符に使って、都合の良いドラマを生み出そうという風潮にはちょっと疑問。
ブルース・ダーンの芝居を堪能できるだけでも至福
妻に先立たれた男やもめの年老いた演劇評論家が、かつて若い頃に愛し合った女優がアルツハイマーを患ったと知り、自らもアルツハイマーのふりをして彼女と同じ介護施設へ入居し、昔の記憶を取り戻させようとする。人間誰しも避けられない「老い」をテーマにしたささやかなラブストーリー。設定的にあまり現実的とは言えないし、ご都合主義な展開も少なくない映画ではあるものの、普段は口うるさい頑固老人の主人公を演じるブルース・ダーンの芝居を堪能できるだけでもニューシネマ世代の映画ファンには至福の喜びだろう。しかも、相手役は『日曜日が待ち遠しい!』でジャン=ルイ・トラティニャンの毒妻役だったカロリーヌ・シロル!