川っぺりムコリッタ (2021):映画短評
川っぺりムコリッタ (2021)同じ食卓を囲む、ささやかな幸せ
引き算の芝居が笑いを誘うムロツヨシ演じる図々しい隣人に、ひたすら不穏な空気を放つ吉岡秀隆演じる墓石売りなど、どこか足りない人々が慎ましく同じ食卓を囲む。いわば心温まる長屋もの、疑似家族ものだが、彼らは過去に大切な人の死に直面していた設定から語られる、日本人の死生観という骨太なテーマが突き刺さる。見知らぬ地を訪れたアウトローな主人公や独特なユーモアと間、白米とみそ汁(+イカの塩辛)を欲する飯テロ映画という意味では、しっかりと荻上直子監督作。公開延期を経て、同じく“ゼロ葬”を扱った『アイ・アム まきもと』と同月公開となるが、どちらも満島ひかりの存在感が肝となる良作である。
この短評にはネタバレを含んでいます