浜の朝日の嘘つきどもと (2021):映画短評
浜の朝日の嘘つきどもと (2021)日常に映画があることの幸福
福島県に実在する老舗映画館「朝日座」を舞台に、コロナ禍にあって映画の灯を絶やさんと奔走する人々を描く。確かに、極端なことを言えば映画などなくとも人間は生きていけるが、しかし映画がそこに存在するおかげで救われる人生や豊かになる生活もある。新型コロナに経済格差、高齢化に原発など、現代日本社会が抱える諸問題を散りばめつつ、悲喜交々の人間模様を通して「映画のある日常」の幸福を謳いあげた脚本はなかなか秀逸。毒舌スパイスの効いたブラックユーモアや、地に足の付いたキャラクターがストーリーに説得力を与えている。中でも、気風はいいが男にだらしない高校教師を演じる大久保佳代子は、これ以上ないくらいのはまり役。
この短評にはネタバレを含んでいます