半狂乱 (2021):映画短評
半狂乱 (2021)暴力的な熱意と、跳ね返る悪意で機能する舞台装置
藤井監督作品らしい、人間の悪意の強烈さ。本作のそのピークとなる場面は強烈過ぎて目をそむけたくなったが、先には意外な結末が待っていた。
小劇団の公演の模様と、それに向かうまでの過去の物語が交錯する構成。密に絡んだそれは劇場内で起こることを暗示し、ときにミスリードしながら、見る者を翻弄。キャラクター間の感情のピンボールのようなぶつかり合いやすれ違いが物語をスリリングにする。
熱意あふれる若い劇団員たちの真実を明かすラストは『ソウ』のようなドンデン返しに通じるものが。しかし、藤井監督はさらに悪意を突き詰める。その突き詰めゆえに、本作は脳裏にこびりつく強烈な心理スリラーとなった。必見。
この短評にはネタバレを含んでいます