あちらにいる鬼 (2022):映画短評
あちらにいる鬼 (2022)倫理や理屈では計り知れない情愛の不可思議
瀬戸内寂聴と井上光晴をモデルにした中年男女の不倫ドラマだが、実際はひとりの浮気男を巡る女たちの物語と言えよう。平凡な幸せなど求めず心の赴くままに生きる女性作家、夫のため自己を犠牲にして不倫を黙認する妻。ほかの愛人たちを含め、いずれの女性もある種の覚悟を持って愛に身を投じるが、しかし肝心の男は仕事も家庭も女もと「いいとこ取り」を欲してフラフラし、周囲にいい格好をしようとして嘘ばかりつく。言うことは立派だがやることはクズ。そんなダメ男を女たちが取り合うのではなく、互いの存在を尊重してシェアするところに、その是非はひとまず置いておくとして、倫理や理屈では計り知れない情愛の不可思議を感じる。
この短評にはネタバレを含んでいます