幻滅 (2022):映画短評
幻滅 (2022)報道に携わる者の矜持を問うメディア版『バビロン』
1820年代のフランス。詩人を夢見て田舎からパリへ上京した理想主義者の若者は、金と名声と身分がものを言う社会の壁に阻まれ、新聞記者となってその全てを手に入れようとする。急成長する中小新興メディア、記者たちは報道の自由を金儲けに濫用し、社交界のゴシップがヘッドラインを飾り、金持ちは私利私欲のため真実を捏造。結果、フェイクニュースと誹謗中傷が世論を動かす。まるで今のウェブメディアやSNSの世界ですな。狂乱の19世紀パリ、堕落した報道の世界。さながらメディア版『バビロン』。社会に幻滅した若者は理想を捨て、出世のため悪徳と快楽に魂を売る。その栄光と破滅の物語を通して、報道に携わる者の矜持を問う力作だ。
この短評にはネタバレを含んでいます