波紋 (2023):映画短評
波紋 (2023)静かに繰り広げられる食卓バトルに爆笑!
デビュー当時からにじみ出ていた荻上直子監督の底意地の悪さが炸裂しまくる、ほのぼの感ゼロのブラックコメディ。芸達者でクセが強い舞台出身女優の豪華競演も見どころだが、さまざまなカタチで登場する「水」が生み出す波紋のなかでも、最愛の息子(またも磯村勇斗!)が連れてくる恋人と食卓を囲んでの静かなバトルはひたすら爆笑。筒井真理子演じるがんじがらめになっていく主婦の姿は『かもめ食堂』以来、イメージが定着してしまった荻上監督そのもの。宗教や放射能、差別といったタブーとも取れる問題をテーマにしながら、いちばん描きたかったのは自我の解放だけに、絶望の連鎖の先に爽快なラストを用意している。
この短評にはネタバレを含んでいます