消せない記憶 (2023):映画短評
消せない記憶 (2023)記憶を巡る切なくも暖かで優しい物語
舞台俳優の男性とミュージシャンの女性。どちらも無名ながら表現者としての大志を抱く若い2人が、偶然の巡り合わせで知り合い恋に落ちるものの、自身が若年性アルツハイマーを患ったと知った男性は、彼女に迷惑をかけまいと黙って姿を消してしまう。ここまではありきたりなメロドラマなのだが、依頼人の記憶を預かる「記憶代理人」なる存在が登場することで、にわかにファンタジーの様相を呈してくる。良いことも悪いこともひっくるめて、愛する人と過ごした大切な時間の記憶、そこに込められた様々な感情。そのひとつひとつを慈しむような、園田新監督の丁寧で繊細で優しい語り口が好印象だ。地味ながらも味わいのある小品佳作。
この短評にはネタバレを含んでいます