バカ塗りの娘 (2023):映画短評
バカ塗りの娘 (2023)塗る。研ぐ。その行為をじっくり映し出す
ひたすら漆を捏ねて、器に塗る。研ぐ。塗る。それを何度も繰り返す。その手元をじっくり見せる。そういう映像が、何度もたっぷり映し出される。そのたびに、無言のまま、ただ無心に動かし続けられる手を見ていると、その行為に没頭している時の、一種の心地よさ、忘我の世界があることが、感覚として伝わってくる。伝統がどうとか、家業を継ぐとか、そういうこととは関係なく、主人公やその父のように、そういう世界に魅せられることはあるだろうと感じさせる。
塗って研いでを何十回も繰り返すので"バカ塗り"と呼ばれる伝統工芸、津軽塗の職人である父とその娘。2人が共有するものが、セリフではなく彼らの手元から立ち上る。
この短評にはネタバレを含んでいます