ABYSS アビス (2023):映画短評
ABYSS アビス (2023)日本の今が浮かび上がる恋愛残酷物語
家庭で、職場で、恋愛関係で、理不尽な暴力や抑圧に苦しめられてきた若い男女が出会い、お互いの傷を癒すうちに惹かれ合い、やがてささやかな逃避行の旅へと出る。辛い、死にたい、こんな生活もうやだ。それでも現状を受け入れて我慢し、自分なんかどうなったっていいと諦めている2人。それはまるで現在の日本社会を包み込む空気そのものだ。果たして、そんな彼らに人生を変えることが出来るのか?危険で妖しい夜の渋谷をスタイリッシュに捉えた映像美と、その薄暗がりに響き渡るEDMのサウンドが、今を生きる若者の孤独と絶望を浮き彫りにする。主演・監督・脚本を兼ねる須藤蓮は、間違いなく今後最も注目すべき才能のひとりだ。
この短評にはネタバレを含んでいます