過去負う者 (2023):映画短評
過去負う者 (2023)ドキュメンタリーが届かぬ領域に手・声・存在を伸ばす傑作
『ある職場』のディベート的方法論を発展させた舩橋淳監督の「オーセンティック・ウィル(真なる意志)」シリーズ第2弾。元受刑者の社会復帰が主題。徹底した取材をもとに、有機的な生成によるフィクションとして再構築する試み。台本を用意せず、即興的な能動性を要求される俳優達は皆「出演・共同脚本」のクレジットが与えられる。
我々はつい正義や傍観という安全圏に立ちたがるが、そうではなく問題の渦中にいる他者を当事者として生きてみること。そこで自分という主体はどんな思考と感情が発動するか。果敢な実験劇場の中で壮絶なクライマックスが現出する。「自分の言葉」を持ったキャスト陣との圧巻のチーム戦だ。
この短評にはネタバレを含んでいます