最悪な子どもたち (2022):映画短評
最悪な子どもたち (2022)リアルの採取法を更新するメタシネマ
冒頭からジェシー、リリ、ライアンといった少年少女達の存在の生々しさが迫ってくる。これはとある映画のオーディション風景。そこからメイキング風に映画制作の裏側が描かれるが、実は全てフィクション。実際に演技経験のない素人俳優を起用しつつも、脚本はきっちり構築され、カメラの前の即興はなしだという。つまり偶発の事故が一切起こらない「安全な環境」の中でこれが撮られたことに本当に驚いた。
監督の女性コンビはキャスティング・ディレクターや演技コーチ出身。野生のリアルは狩猟的に搾取しなくても、同意や協調の中で映画に刻める。「撮ること」の加害性への批評的なアプローチを前面化させ、それが高度に実践された傑作だ。
この短評にはネタバレを含んでいます