映画 ◯月◯日、区長になる女。 (2024):映画短評
映画 ◯月◯日、区長になる女。 (2024)ライター3人の平均評価: 4
異才ペヤンヌマキの、「女シリーズ」の最新形!
2022年6月19日に現職区長を僅差で破って当選、杉並区初の女性区長(岸本聡子)が誕生するまでの赤裸々な経緯を追いかけた選挙ドキュメンタリーだが、これ、マーベルやDC、アメコミヒーロー映画好きな人も観たほうがいい。杉並区議会は以降、彼女の賛同者たちも出馬して当選し、リアルMCUみたいな様相を呈しているのだから。
しかしそのユニバースの形成は絶対ではなく、支える住民たち、主権者の舵取り次第。双方が日々、琢磨しなければ成立しない茨の道でもある。当事者、杉並区民のペヤンヌマキの初監督映画。主宰する演劇公演では様々なアプローチで女の生態・実態をジワジワと炙り出していたが、視野を広げた最新形だ。
政治や社会のニュースで苦い思いをしている人は必見
「この国では、権力者に都合のいいように、選挙のやり方が壊されている」。そう語ったのは杉並区長選に出馬した岸本聡子だ。だけどそこで諦めてしまわず、市民運動をしていた人たちと結束し、時にはぶつかり合いながら、現職を破って当選してみせた。仲間たちも次々と区議選に当選して、杉並区議会を変えようとしている。日々流れてくる政治や社会についての理不尽なニュースで苦い思いをしている人は必見の作品だろう。政治は自分たちと地続きだし、政治は自分たちで変えることができる。「民主主義と社会正義の実現には不断の努力が必要」という岸本の言葉のとおりだ。作品の伝えたいことがよりクリアになるパンフレットの購入をおすすめ。
まさに実写版『ウィッシュ』
選挙ドキュメンタリーにまた新たな秀作が仲間入り。だが多くが古い体質蔓延る日本の政治の根源を解明しようと、選挙戦の舞台裏で行われている駆け引きに焦点が当てられている中、本作は我々日本人がとうの昔に諦めてしまった民意を政治に反映させるプロセスを追った。本作の杉並初の女性区長となった岸本聡子氏や支援者は、自分たちの住環境を知らぬ間に壊す区政にNOを突きつけるために立ち上がった。まさに星に願うだけでなく声を上げることの大切さを伝えたディズニーアニメ『ウィッシュ』のごとし。その熱風に程よい距離を保ちつつカメラを回した劇作家ペヤンヌマキ監督の、芝居と異なる一面を見られたのも新鮮。