その鼓動に耳をあてよ (2023):映画短評
その鼓動に耳をあてよ (2023)日本社会の薄氷のような底を支える救命医師たち
話題作を送り続けている東海テレビドキュメンタリーの最新作。「断らない救急」を掲げる名古屋掖済会病院には、昼夜を問わず近隣の病院が受け入れなかった患者たちが次々と運び込まれる。救急車の受け入れ台数、年間1万台。なかには身寄りのない人や、保険に入っていない人、治療費を払わずに逃げてしまう人もいる。それでも彼らは患者たちを受け入れ続ける。自らこの世界に飛び込み、苦悩しながらも、前向きに患者たちを治療し続ける医師たちは、とてもヒロイックに見える。だが、ナレーションを排した静かな映像を通して、日本社会の薄氷のような底をわずかな数の救命医師たちが背負っていることに否が応でも気付かされるだろう。
この短評にはネタバレを含んでいます