殺人鬼の存在証明 (2021):映画短評
殺人鬼の存在証明 (2021)実在の殺人鬼を下敷きに、重層的な物語を描く
1987年から1991年のロシアがソビエト連邦だった時代、ある刑事が36人の女性を殺害した連続殺人犯の捜査にのめり込んでいく。犯人の人物像は実在の連続殺人犯アンドレイ・チカチーロを踏まえており、捜査指揮官の名前イッサも共通だが、よくある捜査に溺れていく刑事ものとは少々異なり、それ以外の要素が多い重層的な物語が魅力。
刑事の前には警察組織の闇が立ち塞がり、それが彼を蝕んでいく。逮捕した犯人には誤認逮捕の可能性が生じて、彼が真犯人なのか確信が持てなくなる。そしてその背後に、もうひとつの予期しなかった物語が浮かび上がってくる。その背後で北の森はどこまでも暗く、室内の空気はいつも湿って暗い。
この短評にはネタバレを含んでいます