スパイダー/増殖 (2023):映画短評
スパイダー/増殖 (2023)"害虫"をナメんな!
繁殖した毒グモがマンションをパニックに陥れるという筋だけ聞けば、ありがちなホラーと思われるかもだが、これがなかなか骨太。
舞台となるパリのバンリュ―(=郊外)はヴァニセック監督の育った地で、低所得者や移民が多数暮らしている。原題の“害虫”とは毒グモに加え、偏見にさらされたそこに暮らす人々のことでもある。警官隊に隔離され、出口を失った、そんな彼らのサバイバルを活写。増えていくクモの巣の異様さが絶妙の照明効果によって恐怖を煽る。
監督の生涯のベストワン映画は『グラディエーター』とのことだが、必死のサバイバーたちのしぶとさにその影を観ることができる。
この短評にはネタバレを含んでいます