小泉今日子、現代男子にダメだし!香川照之、男をもっと大切にして!
カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞するなど、高い評価を集めている映画『トウキョウソナタ』で、夫婦を演じた香川照之と小泉今日子に話を聞いた。小林多喜二原作の映画『蟹工船』や平成の映画『一杯のかけそば』ともいわれる映画『ホームレス中学生』など、貧困をテーマにした作品が次々と登場しブームになる中、Jホラーの鬼才・黒沢清監督がメガホンを取った本作では、格差社会のはざまで迷走する一組の家族が描かれている。
会社からリストラされ困窮する父親にふんした香川は、出演をきっかけに、日本の女性たちへお願いしたいことができたという。 「家庭で男をもっと大事にしてください(笑)。引っ張り切れるかどうかはさておき、男が引っ張った家庭の方が幸せだぞ、お父さんは頑張っているんだ!……と伝えたいです(笑)」と語る。香川が演じた父親は、家庭でも社会でも権威を失いつつある、現代の父親像の象徴的キャラクターだ。「確かにこの家族は崩壊しつつあるんですが、僕はかつての日本が持っていた良い特性は、こうした旧時代的な家族の中にあると思います。お父さんがベロンベロンに酔って帰ってきても、お母さんは怒らずにデンと構えているとか(笑)。男が引っ張っているように見えて、実は女性が一枚上手で、その男をサポートしている。そういう家族に戻ろうよ、という気持ちはありますね」と男性側からの熱い思いを吐露。
小泉は、この映画を通して「わたしも東京に住む大人の一人として東京や日本が抱えている問題をちゃんと感じて、生きていかなきゃと思った」と話す。「そうすると結果的に、男の人にも優しくなれるんじゃないかな。社会に興味を持つと、男の人が社会でいかに大変かということもどんどん見えてくると思いますから」と香川に同調。「ただ男の人にも、もっと強くなってほしいですけどね(笑)。街を歩くカップルを見ていると“何で彼氏がハンドバックを持ってあげているの? かっこ悪いからやめようよ”なんて思うことも多いから(笑)」と付け足して、弱腰過ぎる男性陣にもピシャリ。
小泉が体感した、かっこいい男らしさや女らしさの原風景は、昭和の家庭にあるという。先にビールとおつまみでやり始める父親、そのかたわらで晩ご飯の支度をする女たち……。そんな風景がごく自然なものとして、心の中に残っている。「わたしはそういうお父さんの姿が大好きだったんですけど、今はそんなイメージも持てないんでしょうね。だから映画を通して、そういうイメージを若い人に見せてあげられたらと思います」と柔らかくほほ笑んだ。
『トウキョウソナタ』はちょっぴり懐かしい、かつては当たり前だった家族の形を描いたヒューマンドラマ。そんな昔ながらの家族の風景が、現代の日本社会のへの小さな希望の光になるのかもしれない。
映画『トウキョウソナタ』は9月27日より恵比寿ガーデンシネマ、シネカノン有楽町ほかにて全国公開