景気悪化でオスカー戦線に異常あり!宣伝広告削減で小粒の作品ピンチ!
アメリカの景気は世界経済をも引きずり込んで現在も後退の一途。そんな中、何かと景気の良い話が多かった映画業界にも、ついに魔の手が忍び寄ってきた。不況になって一番あおりを受けるもの中に広告事業がある。企業は広告経費を削減して景気の悪化に対処するのである。
映画のヒットは宣伝にかけるお金に左右されている部分があるここハリウッド。普段なら膨大な宣伝費をふんだんに自社作品につぎ込んでいる大手の映画スタジオだが、アカデミー賞を筆頭とするアワード・シーズンを目の前にしていよいよ、アメリカ経済悪化のあおりが現れてきた。
先々週、パラマウント・ピクチャーズがジェイミー・フォックスの新作映画『ソロリスト』の公開を来年まで遅らせると発表してハリウッド界隈に波紋を投げかけた。関係者の話しによると、今期内においては、『ソロリスト』の宣伝広告費にかけるだけの予算が取れないため、来期に移行した、というのが内情らしい。10月後半より2月初旬までは、どこの映画スタジオも自社の映画を各アワードにプッシュするために膨大な宣伝広告費を割かなければならない。パラマウントを含めて各スタジオも、昨今のマネー事情を念頭に置いた戦略を展開せねばならぬ苦しい立場に立たされているわけだ。
しかし、そうなると必然的に後に追いやられてしまうのが秀作なのに小粒の作品たちである。12月に入ると、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞に間に合わせるべく、推定45作品という驚くべき数の作品が一般公開される。クリスマスの週だけをとっても9作品という数の映画が公開される予定で、この中にはレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが映画『タイタニック』以来の共演ということで大きな期待を集めている映画『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』、メリル・ストリープ主演でオスカーの呼び声がすでに高い映画『ダウト』(原題)、そしてこちらもアカデミー候補は必至と見られている映画『フロスト/ニクソン』(原題)などが入っている。削減された宣伝広告費の中で、これらの大作に混じって小粒のインディーズ作品たちが押しつぶされてしまうことが非常に懸念されている。
賞関係を専門とするコンサルタントたちの話によると、「アワードの日がもっと近づいたらキャンペーンにお金をかけることは予想されるが、現時点では今までと同じ時期に比べると非常に静かな状況」ということだ。
大作映画の公開日は1年も前から戦略作戦の大切な一環として綿密に計画される。大型スタジオの作品があふれるその中で、わずかな隙間を見いだして劇場公開をして頑張り続ける小さい作品たち。アワードへの作品をノミネートする審査員たちが小粒なものでも秀作に目をつけることを忘れないようにと関係者たちは祈っている。