アカデミー賞は確実?ショーン・ペンがゲイの活動家を演じる映画『ミルク』
いよいよオスカー戦線に名乗りを上げる話題作が登場し始める中、アカデミー賞ノミネートが確実視される映画『ミルク』(原題)についてガス・ヴァン・サント監督、ショーン・ペン、エミール・ハーシュ、そしてジェームズ・フランコ、ジョシュ・ブローリンが会見に臨んだ。
1970年代のサンフランシスコのゲイ・コミュニティーがあったカストロ通りで、徐々に頭角を現し始めた活動家ハーヴェイ・ミルク(ショーン)に焦点を当てた本作。ハーヴェイがアメリカで初のゲイ・カミングアウトをして選挙の立候補者となり、後に市政執行委員にまで選ばれていく波瀾(はらん)万丈の人生を描いた伝記映画。
まず、ガス監督は「これまで僕はさまざまなゲイを扱ったキャラクターをたくさん描いてきたが、ハーヴェイほどポジティブな人物はいなかった。当初はオリヴァー・ストーン監督が製作する予定だったが、企画倒れになってしまい、それから僕に回ってきた。依頼されてからというもの僕は調査に時間をつぎ込んだ。政治を題材に扱った作品は興味深いが、ハーヴェイという人物を通して1970年代を凝縮した形で伝えることができるのは、本当に素晴らしいことだと思う」と話してくれた。
主演のショーンは「ゲイの活動家を扱った映画を製作することに恐れはなかったね。むしろ、挑戦することを要求されることに興奮したくらいさ。センセーショナルな内容の脚本を渡され、さらに特別の価値と意味合いを持ったゲイ問題に触れているからね」とのことだ。一方、ハーヴェイのオフィスで働くクライブ・ジョーンズを演じたエミールは「実際のクライブは、毎日のようにセットを訪れてくれて、貴重な時間を共に過ごした。彼はいたずら好きで、非常に面白い人物でね。そのユーモアがハーヴェイとのきずなを深めたんだと思う」と語った。ちなみにクライブは、後にサンフランシスコ・エイズ財団を設立する人物として知られている。
ハーヴェイの私生活でのパートナーであったスコット・スミスを演じたジェームズは「実在のスコットは1990年代半ばに亡くなったため、ほとんどはスコットの友人や知り合いの話を聞いて特徴を探っていったよ。彼はさえない俳優時代にハーヴェイと知り合い、何か重要なことにかかわりたいと言うハーヴェイの意思を尊重し、彼に付き添ってサンフランシスコに移った。その後、ハーヴェイの政治活動が始まってからも、キャンペーン・マネジャーとして誠心誠意ハーヴェイを支えていたんだ」と語ってくれた。
ハーヴェイが亡くなってから早30年。カリフォルニアでは同性婚を認めない住民投票が可決され、反同性結婚が優勢な状態にある。本作で見えてくる問題とは一体何なのか。日本公開が待ち遠しい一本だ。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)