初登場の2位『ウルフマン』と3位『パーシー・ジャクソン』が好調
全米ボックスオフィス考
日曜日がバレンタインズ・デイにあたり、月曜日がプレジデント・デイで3連休だった今週の全米ボックスオフィスの週末チャート争いは、新作ロマンチック・コメディー『バレンタインデー』がこちらも新作の『ウルフマン』を破り、見事に第1位を獲得した。
今週末は歴代2月中の週末、そして過去のプレジデント・デイの連休と比較してもボックスオフィス総合売り上げの最高をたたき出しており、歴代の記録を保持していた去年の同時期と比べて、興行収入は10パーセント増しの約2億5,000万ドルという新記録を打ち立てた。この結果は、『バレンタインズ』『ウルフマン』、そして『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』という話題の新作公開が3本連なったこと、そして依然として気炎を上げている『アバター』の好成績が主な要因と思われる。
『バレンタインズ』の配給を担当しているワーナーブラザーズは、たまたま週末日曜日がバレンタインズ・デイにあたるという絶妙のタイミングを生かし、全米3664館・5100クリーンでの上映という大型ロードショーを展開。その作戦が見事に功を奏して、同作品は5,641万(約50億7690万円)ドルという興行収入を叩き出した。(1ドル=90円)
この結果、さすがの狼男もロマンスと配給会社には勝てなかったようで、週末話題作2本目の『ウルフマン』は、残念ながら2位に甘んじて3,175万ドル(約28億5,750万円)の売り上げ。名優アンソニー・ホプキンスが強力に脇を固めていたものの、ストーリーのトーンが暗いことに加えて、主役の狼男がベニチオ・デル・トロというのが少々弱かったようだ。
3位は、こちらも新作で『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』で、3,124万ドル(約28億1,160万円)の成績。ギリシャ神話版の『ハリー・ポッター』といった路線で打ち出されたPR作戦が功を奏したようで、過去の同系統作品『スパイダーウィックの謎』や『テラビシアにかける橋』を大きく上回る成績を上げた。
4位は、先週2位からダウンしたもののまだまだ余力ありの『アバター』で2,361万ドル(約21億2,490万円)の売上げ。ツーランクもダウンなのに、どうして余力ありなのかというと、公開映画館数が今週末に入って315館減っているのに、売り上げを割合をパーセントにすると先週と比べて3.3パーセントのアップだったからである。9週目にしてこの粘りは前代未聞のすごさである。
トップ5圏内に辛うじて生き残ったのは、先週の1位から急降下になってしまった『ディア・ジョン』(原題)で1,670万ドル(約15億300万円)。とはいうものの公開後11日間で5,670万ドル(約51億300万円)の興行成績をあげているこの作品は、原作者ニコラス・パークの過去の映画化作品であるマンディー・ムーア主演『ウォーク・トゥ・リメンバー』(2002)を超える結果となっている。
さて、次回のチャート争いだが、上位に食い込むこと確実の新作品はレオナルド・ディカプリオ主演・マーティン・スコセージ監督作品のダーク・サスペンス『シャター アイランド』だ。2006年度アカデミー賞受賞作品『ディパーテッド』以来のレオ&スコセージ監督のコラボに大期待である。
このほかのめぼしいデビュー作は、『シャッター アイランド』ほどパワフルな作品ではないし、上位5位に入るかどうかもかなり疑問だが、ユアン・マクレガーと元007ことピアース・ブロスナン主演の『ザ・ゴーストライター』(原題)という作品がある。サスペンス作品で、元英国首相のメモワールを執筆することになったゴーストライター(=代理ライター)が発見してしまう元首相の暗い過去に巻き込まれていく……というお話。ひと昔前のユアン人気とピアース人気があれば上位も狙えたであろう作品だが、現在の2人のパワーでは少々難しいかもしれない。(取材・文:神津明美 / Akemi Kohzu)