『ハリー・ポッター』最終章、公開直前の3D化断念!その真相…実は2Dで撮影、完成度に問題
映画スタジオのワーナー・ブラザーズは、来月に公開を控えたシリーズ最終章の前半となる映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』の3D公開を断念した理由として映像のクオリティーに問題があることを明かしたが、それは本作がもともと3Dカメラで撮影されていないことが原因であると明かされた。
シリーズ最終章となる『ハリー・ポッターと死の秘宝』は、もともと撮影時に映画『アバター』のように3D映像用のカメラで撮影されたわけではなく、2D映像用のカメラで撮影し、後処理で3D化しようと試みていた。しかし、この方式で3D映像のクオリティーに難があると言われていたのが映画『タイタンの戦い』だ。『タイタンの戦い』は興行的な成功を収めてはいるが、その映像のクオリティーの評価は決していいものではない。大方の意見が「画面が暗すぎてディティールがよくわからない」というものをはじめ、本来の映像の迫力を二の次にされ、散々な評価をされていた。それもそのはず、もともと3Dで撮影された映像ではないためで、この評価については、監督に同情せずにはいられない。それを裏付けるかのように、監督も「本当は3D化はやりたくなかった……」と言い出す始末。しかし、ハリウッドではこの後も「後処理での3D化作品」が続々と製作されていったのだが、必ずしもクオリティーが合格点の作品ばかりではなかった。
今回の『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』3D化の断念については、なぜ最初から3Dのカメラで撮らなかったのかと責めるファンよりも、恐らく「よくぞ決断してくれた」とその勇断を褒めたたえるファンの方が多いのではないだろうか。製作スタジオのワーナーの発表したコメントによると、「この作品を最高の3D品質で完成させることができなかった。ファンはこの物語の素晴らしい旅の終わりを長く待ちわびており、がっかりさせたくない」と発表しており、誠実な対応といえる。なぜなら、多少のクオリティーに目をつぶっても3Dで公開した方が映画館の館数も増え興行的な成功を望める。しかし、あえてそれをあきらめたのは、長年『ハリー・ポッター』にかかわってきたスタッフの切実な思いでもあるのだろう。こうなるとPART1だけでなく、おそらくPART2についてもよほど技術的に革新的なことが起こらない限り、3D化は断念するということになるのではないだろうか。
公開を来月に控えた直前での3D化の中止のため、多少の混乱は起きるだろうが、拝金主義になりがちな最近の映画業界にいい意味で一石を投じたといえる。
映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』は2010年11月19日、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』は2011年7月15日より丸の内ピカデリーほか全国公開