河瀬直美監督「子どもを産んでみたくなりました」という女子高生の発言に破顔!!
30日、渋谷ユーロスペースにて、お産をテーマにしたドキュメンタリー映画『玄牝 -げんぴん-』の高校生限定試写会および、トークディスカッションが行われ、河瀬直美監督と約30人の現役高校生の間で“出産”について熱いトークが展開された。
「子供を産む」ことをテーマに“命と向き合う人々”を描いた映画『玄牝 -げんぴん-』。そこには「生きること」や「命」という普遍的ではあるものの、普段あまり立ち止まって考えないような題材が真摯に描かれている。自身も一児の母である河瀬は「映画『沙羅双樹』を撮っているとき、自然分娩の取材をして、子どもを畳の上で産むということに衝撃を受けまして……。そして自分も同じ出産の経験をしてすごく感動したんです。だから少しでも多くの人に(自然分娩のことを)知ってもらいたいと思ったんです」と制作意図を語る。
河瀬の想いの詰まった映画を観終わったばかりの高校生からは、いろいろな質問や感想が飛び交う。やはり高校生にとって妊娠・出産とは“痛い・怖い”というイメージが強いようだが、映画ではそんな部分もしっかりと丁寧に描かれおり、ある女子高生は「観る前は(出産は)怖いと思っていたけど、今はいつかそういう時期が来たら産んでみたいと思いました」と前向きな感想。すると河瀬は「もちろん私も陣痛はありました。でも、生まれたときの赤ちゃんのぬくもり、抱き上げたときの感動は、どんなことにも代えがたい喜びがありました」と当時を語り、「人間は喜怒哀楽、いろいろな感情を抱きますが、自分に蓄積されていくのは強い気持ちだと思うんです。出産も、痛さや怖さもありますが、それ以上に喜びが大きければ、きっと素敵な感情が残ると思う。人には物事をプラスに考えることができる能力があるんです」とお産を通じて得た人生観を披露した。
その後も、流産や死産など、決してそむけてはいけないシビアなテーマについても語られたが、高校生たちは真剣なまなざしで会話に参加していた。
最後に「出産に立ちあいたいという男子や、お産に対するイメージが変わったという女子の意見も聞けてとてもうれしかったです」と満面の笑顔で語る河瀬。終了後もロビーで多くの高校生たちに質問されている風景が、この映画の反響の大きさを物語っている。
本作は、自然分娩を推奨している愛知県岡崎市の吉村医院を舞台に「子供を産む」「人が生まれる」ことをテーマにしたドキュメンタリー映画。スペインで開催された第58回サン・セバスチャン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した。
映画『玄牝 -げんぴん-』は11月6日より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開