鉄腕アトムの「足音」を生み出した張本人!新しい音を追い求める音響デザイナーのドキュメンタリー映画
1963年から放映のスタートした、国産初のテレビアニメ「鉄腕アトム」。当時誰もがあこがれた21世紀の「未来」を舞台にした本作で、ロボットである主人公、アトムの足音などを、素晴らしいひらめきによって生み出した音響デザイナー、大野松雄を追ったドキュメンタリー映画『アトムの足音が聞こえる』が公開される。
大野が手掛けた、ロボットであるアトムが立てる足音は、機械的な「コツコツ」というものではなく、柔らかく、そして愛らしく響く「ピョコピョコ」という音だった。機械であるアトムからやわらかく響くその足音は、アトムのキャラクターや設定にさらなる広がりを持たせ、多くの視聴者によって記憶されることとなった。そしてその他にも、パソコンもない時代に音を電子的に加工し、作中で鳴り響く数々の「未来」の音を作り上げた。その音作りに対するひらめきとこだわりは、ときに周囲を困惑させ、「鉄腕アトム」製作当時は故・手塚治虫氏とやりあうこともしばしばだったという。
アトムの後にも、テレビシリーズの「ルパン三世」など多くアニメーションの作品にかかわった以外に、エキスポなど各種展示会における、パビリオンの空間音響システムのデザイナーなど、多くの仕事を手掛けた大野は、80歳にとどく年齢ながら、現在も現役。そんな彼の偉業を追うのは、短編映画作家として活動した後に、オダギリジョー主演の映画『パビリオン山椒魚』で劇場用長編映画に進出した冨永昌敬。
なんでもやってしまうという精神の下、現在にいたるまでこの世ならざる、新しい音を追い求める大野の姿を、希代の映像作家が追いかける本作。アトムの足音は、どうやって作られたのかを知るために、そして、日本の音響の歴史をひもとくという意味でも、興味深い作品といえそうだ。
映画『アトムの足音が聞こえる』は2011年5月ユーロスペースほか全国公開