妻が家を出ていく当日…まだ妻を愛している夫…音楽はナシで雨音のみ…淡々と描く秀作
2月17日、第61回ベルリン国際映画祭コンペティション参加の韓国映画『カム・レイン・カム・シャイン(英題)/Come Rain Come Shine』のイ・ユンギ監督と主人公夫婦を演じるイム・スジョンとヒョンビンが会見した。今回が4回目のベルリン参加となるユンギ監督だが「コンペティションは初めて。こうして会見するのもワクワクしています」と喜びを表した。
本作は、別れを切り出した妻が家を出る当日の、夫婦の様を細やかに追う。激しい雨に降り込められた2人の家がほぼ全編を占め、ドラマチックな出来事もない。音楽さえオープニングとエンディングに使われるのみ、雨音だけがバックグラウンドミュージックだ。ユンギ監督が韓国ではメインストリームから外れているとする作品だ。
妻役のスジョン、夫役のヒョンビンとも、人気の高い若手スターだ。ひくてあまたの彼らがあえて本作出演を決めた理由について、スジョンは「こういう映画を作るのは難しい。それに貢献したかったんです」と語る。ヒョンビンも同意し「脚本を読んだだけで参加する理由は充分です」と加える。妻の突然の申し出にショックを受けつつ取り乱したり腹を立てるようなこともない夫、最後まで理解と優しさを見せる夫にまだ残っている愛情といらだちを感じさせながら、それを出すまいとする妻を、抑えた演技で見せた2人だ。
だが貢献したばかりでもなかったようだ。「妻が別れようとする側だけれど、傷ついてもいる。けんかしたりする方が演じるのは簡単だけど、それを淡々と演じなければならない。女優として成長することに役立ったと思います」と言うスジョン、「とても大変な役だったけど、俳優としてすごく満足しています」と言うヒョンビンともに、これから演技していくうえで大きな糧となったようだ。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)