『ラスト サムライ』ならぬ『ラーメン侍』!渡辺大、父・渡辺謙の背中に教わった役者道を語る!
ラーメンを題材とした日本映画『ラーメン侍』に主演した俳優の渡辺大が、父・渡辺謙と同じ俳優という職業を選んだ気持ちについて真摯(しんし)に語った。
渡辺の主演作となる本作は、日本のラーメンをテーマに親子のきずなを描いた作品。ラーメン映画といえば、過去にアメリカでもヒットを記録した1985年の伊丹十三監督の映画『タンポポ』があるが、同作には父・渡辺謙が出演しており、くしくも時代を超えて父子で「ラーメン映画」への出演を果たすことになった。27歳になったばかりの渡辺は、そのことについて「『タンポポ』もちょうどオヤジが25、6くらいのときの映画だったんですよ。年齢的にも今の自分に近いし、今回は『タンポポ』と同じ日本のラーメン映画ということもありますしね」と不思議な縁を感じているようだった。
本作で渡辺は、裸一貫で人気ラーメン店の店主へと上りつめた父・昇と、彼の後を継ぐ息子・光を一人で演じるという難行に挑戦。それでも一人の役者としては、父と同じ職業を選ぶことになる光という役に、より共感していたといい、「本人の意志にかかわらず、子どもは親の背中を見て育ちます。もちろん自分が役者をやろうと思ったのも、親の影響はあるわけです。光の心情は自分に近いですね」と明かしている。ラーメン屋と俳優という職業の違いこそあれ、本作は、まるで渡辺自身の人生観を色濃く反映した作品になっているかのようにも思える。「確かにそうですね。仮に役者という仕事でなかったとしても、オヤジはこの世界でどういうふうに生きていたんだろう。自分もそういうものを確立できるのだろうか、とは考えると思いますね。そういうのって、男なら必ず心のどこかにあると思うんですよ。もしくは反発するのかもしれませんが」という渡辺からは、役者としての父を尊敬しながらも、自分なりの役者道を追い求めている様子がうかがえた。映画『ロストクライム -閃光-』で第20回日本批評家映画大賞で主演男優賞を受賞するなど、父親譲りの目力で独特な存在感を見せる渡辺の役者としての魅力は、共演の奥田瑛二が「芯の通った俳優が生まれた」と絶賛するなど、確実にその力量を見せている。
撮影前、本作のモデルとなった「大砲ラーメン」の新横浜ラーメン博物館店で1か月修行をしたという渡辺。手の甲を見せながら「やけどの跡が今でも消えないんですよ」と笑ってみせたが、「とにかく朝イチの仕込みから、麺あげ、スープをかき混ぜる作業、チャーシューの仕込みまで、映画に出てくるような作業は全部手伝いました」と語る通り、「本物のラーメン職人、ラーメン通が見ても納得できるものを」とのこだわりで行った役づくり。そんな渡辺のプロ顔負けのラーメン・パフォーマンスも、本作の見どころの一つ。『ラスト サムライ』ならぬ『ラーメン侍』になりきった渡辺の熱演にも注目したい。
本作は、無鉄砲な父に反発して東京でデザイナーをやっていた息子が、父の突然の訃報を受け、久留米にあるラーメン屋を継ぐと決意するところから始まるラーメン映画。活気を失った久留米の屋台街を前にしながらも、父の味を再現しようと試行錯誤を始め、そこからやがて父の思いを知るようになる……という父と息子のきずなを描いた作品となっている。(取材・文:壬生智裕)
映画『ラーメン侍』は10月22日よりT・ジョイ博多ほか九州一斉公開