『スター・ウォーズ』サウンドエディターが明かす音響制作の裏側!身分を隠して声優オーディションで合格も
9月16日にブルーレイ版が発売される映画『スター・ウォーズ』シリーズのエピソード1と3でサウンドエディターを務め、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』に登場するグリーヴァス将軍の声も演じる、スカイウォーカー・サウンドのマシュー・ウッドが、自身の手掛けたサウンドや、声優抜てきの裏側を当時のエピソードと共に語った。
ダース・ベイダーの呼吸音やR2-D2の電子音、ライトセーバーの動作音といった効果音もファンの心をとらえ続ける『スター・ウォーズ』シリーズ。マシューは、それらハリウッド大作、また押井守監督の『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』など国内外問わず多くの作品の音響を手掛けるスカイウォーカー・サウンドに勤めるエンジニアで、『スター・ウォーズ』のほかにも、ピクサーの『ウォーリー』や『SUPER 8/スーパーエイト』など、多くの作品でその手腕を発揮している。
マシューが参加し、技術が進歩した時代に製作された、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』から続く新3部作でも、ほとんどの効果音は膨大なストックの中にある動物や乗り物の出す音を重ね加工する、アナログな手法で作られた。その一例としてマシューは、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』でパドメとアナキン、オビ=ワンが公開処刑されそうになるシーンに登場する昆虫型クリーチャー・ジオノージアンの声を挙げ、「やつらの声はわざわざオーストラリアまで行ってペンギンが交尾期に出す声を録音してきたんだ。そこに、オオコウモリがバナナの奪い合いをしている声をミックスさせている(笑)。想像すると面白いよね」とサウンド制作の裏側を解説。現在でも、コンピューターのみで生み出される音のほうが珍しいのだとか。
実際、グリーヴァス将軍の特徴であるせき込みの音も、ジョージ・ルーカス監督のせきが使用されている話は、ファンの間で有名だ。そして、その将軍の声優を務めるのはマシュー本人。もとは膨大な数の声優のサンプルから適任者を探していたそうだが、どうしてもルーカス監督のイメージにぴったりはまる声が見つからなかった。そこで、マシューの友人が「この際おまえがやればいいじゃないか」とアドバイス。マシューは早速行動に移し「自分の声を録音して、正体がバレないように偽名を記してそのテープをジョージに渡したんだ。そうしたら、ジョージは僕の声を選んだんだ(笑)」といういきさつで配役されたのだという。
「プロデューサーが『この人に決めたよ』と言って、僕が使った偽名を口にしたんだけど、自分で偽名のことをすっかり忘れていたから『こんなやつ声優のリストにいたっけ?』って思ったら、まんまと自分だった」と笑って語るマシューだが、そのときは、スタッフが出しゃばり過ぎたと心配になったそう。しかし、真相を知らされたルーカスはむしろ大喜びだったという。ちなみに彼は、『クローンの攻撃』でドロイドにぶらさがっているオビ=ワンをはねそうになるタクシーの運転手といった、クレジットされないような声も多く演じているそうだ。
またブルーレイ化にあたり、旧3部作のリマスタリングも手掛けたというマシュー。『スター・ウォーズ』でC-3POとR2-D2がタトゥイーンをさまようシーンから、かつて入っていたテープ音などをなくし、静寂そのものを演出した場面など、いくつも注目ポイントを挙げた。特に『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』のカーボンフリーズ(炭素冷凍)部屋でベイダーとルークが決闘する場面は「スカイウォーカー・サウンドで働き始めたころ、このシーンをオリジナルのテープから抜粋してヘッドホンで何百回も音を聞いていた」というほどお気に入りで、「そのくらい大好きだったシーンの音を、今こうやってリマスタリングできるなんて、本当に夢のような話だね」と大満足の様子、ぜひ6.1chのサラウンドで最高音質を楽しんでほしいと、ブルーレイ版をアピールした。(編集部・入倉功一)
「スター・ウォーズ コンプリート・サーガ ブルーレイBOX」は9月16日発売 (税込み:1万7,325円) 「スター・ウォーズ プリクエル・トリロジー ブルーレイBOX」「スター・ウォーズ オリジナル・トリロジー ブルーレイBOX」も同時発売(税込み:各8,610円)
発売元:20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン