ポーカーのワールド・チャンピオンに聞く!知られざるポーカーの世界とは?
世界中の人々に親しまれてきたカードゲーム、ポーカーを描いたドキュメンタリー映画『オール・イン:ザ・ポーカー・ムービー(原題) / All In : the Poker Movie』について、ダグラス・ティローラ監督と元ワールド・シリーズ・ポーカーのチャンピオンであるクリス・マネーメイカーが語った。
同作は、ポーカーの起源からワールド・チャンピオン大会、世間でのポーカー・プレイヤーの地位や評価、さらにカジノやオンラインでの影響を描いた注目のドキュメンタリー作品だ。
第二次世界大戦中に従軍していた兵士たちに、戦場でトランプカードが支給され、終戦後帰還した彼らが週末にポーカーをやり始めたことで、50~60年代のアメリカのほとんどの家庭がカードテーブル(トランプ用テーブル)を所有していたそうだ。「最近滅多に見かけなくなったが、もうのすごくコンパクトなテーブルで、それはまるで禁酒法時代から解放された人々が、自宅にホームバーを作った時のように、戦後のアメリカでも友達と過ごすひと時にこのポーカーに乗じ、その際にこのカードテーブルが使用されていたんだ」と語ったダグラス監督は、子どもの頃からポーカーが好きで、これまで鑑賞してきた映画でポーカーが描かれるシーンがすごく好きであることも教えてくれた。
元ワールド・ポーカー・チャンピオンのクリスは、学生時代に父親のお金を借りてポーカーで大損したことがあったが、現在は結婚して子ども居るとのこと、どうやって奥さんを説得してゲームに臨んでいるのだろうか。「実は、僕の妻が家庭の財産を管理しているから、僕がポーカーをする際は、別の銀行にためているポーカー専用の貯金を使用しているんだ(笑)。今は、家庭に影響を及ぼすほどポーカーにお金を賭けることはできない。まず、子どもや妻の世話や家の管理(ローン)などができたうえで、プレイをしているだけなんだ。だから結婚してから8年経つが、妻にお金を借りてまでプレイをしたことはない。もちろん、ポーカーをすることはギャンブラーとも言えるが、もっと責任を持ったやり方をしているつもりだよ」と告白した。
ポーカー・プレイヤーの中には、アルコールやドラッグの依存症の人たちもいたそうだ。「もともとポーカーの上手なプレイヤーは、ある意味リスクを背負ってやる人たちが多い。そういう人たちは、保守的できっちりとした人ではない。さらに、ポーカーのゲームは昼の2時や朝にプレイしている人は少なく、ほとんどの人たちは夜遅くから始めるから、当然、ナイトライフのお酒やドラッグなど、あまり安全ではない環境に導かれていくんだ」と語る通り、80年代に二度のワールド・チャンピオンになったことのあるステュー・アンガーは、コカイン中毒になり、一度は復帰したものの、過去のドラッグの多用が影響して45歳の若さで亡くなっている。
1990年代に、多くのホテルのカジノにあるポーカー・ルームが閉鎖された理由は「単にカジノのポーカー・ルームで売り上げが少なかったからで、むしろスロットマシーンのほうが多かったからでもあるんだ。ポーカー・ルームは、スペースを取るわりには、イマイチ売り上げが伸びずにいたんだよ」とクリスが語ると、ダグラス監督が「それ以外の理由には、実は大会社がホテルを買収し、彼らは独自の会計システムを持ち込んで、ワンスクエアフィートでどれだけの売り上げがあるか計算しだしたからでもあるんだ。ただ、その後ポーカー・ルームの数は減ったものの、正規のカジノであればあるほど、ポーカー・ルームが用意されていて、それが信頼のおけるカジノとしてのバロメーターになったんだ」と説明した。
映画は、ポーカーの初心者から玄人まで楽しめ、さらにどのような経緯でチャンピオン大会などでプレイヤーの手持ちのカードを視聴者に見せながら、テレビで放送できるようになったかなども描かれ、とても興味深い作品に仕上がっていている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)