震災がれき処理に有効な驚愕発明をひっさげ消息不明から一転、20数年ぶりに姿を現した映画監督・曾根中生を独占インタビュー!
1980年代後半に映画界からプッツリと消息を絶ち、その安否が都市伝説化していた伝説の映画監督・曾根中生がインタビューに応じ、物作りに携わる現在、東北大震災のがれき処理に自分の発明を役立てたいと語った。
日活ロマンポルノなどで名をはせた後に映画界と距離を置き、関係者の間で「借金が返せずにヤクザに殺された」「北九州で借金取りと敵対するヤクザの親分になった」「ダンプ(タクシー説も)の運転手をやっていた」など、さまざまなうわさが飛び交った曾根監督。それだけに、昨年の湯布院映画祭における20数年ぶりの登場は、映画ファンの度肝をぬいた。その後は雑誌などが取材に訪れ、まさかの自伝発売(文遊社より今秋)も決定するなど、周囲はにわかに騒がしくなったようにも思える。
しかし本人は、「別に何にも変わりませんよ」と意に介していない様子。映画界とはスッパリ縁を切ったという曾根監督は、空白の20数年間の勉強により、火力や電気を使わずに鉄・ガラス以外の物質を灰にする「磁粉体製造装置」、油と水を混合して新しい燃料を作る「エマルジョン燃料装置」という二つの特許を取得した。現在は大分県でその実験を続けながら暮らしている。平成の浦島太郎といった言葉が似合いそうな曾根監督だが、なぜ人前に姿を現そうと思ったのか。
その理由を、群馬県出身で東北大学文学部を卒業した曾根監督は「東北大震災がなかったら人前に出なかったでしょうね」と切り出した。「わたしが開発した磁粉体製造装置を東北大震災のがれき処理に役立てたいと思って。そのためには昔の名前を出した方が、何となくいろんなことが通るだろうなと思ったんだけど、予想以上に騒がれちゃってね」と笑うが、そのかいあって、現在は東北の関係者と協議を重ね、装置の実用化は着実に進んでいるとのことである。
曾根監督によると、「磁粉体製造装置」に入れたがれきは、磁気と熱の力によって、18時間から20時間で全部が灰になり、1日4トンの処理が可能。灰は60分の1の容量にまで圧縮できるのだとか。さらに現在は、その灰に磁気流を通して、中に含まれるセシウムだけを分離するシステムにバージョンアップすべく、大学機関と共に研究を重ねているのだという。失踪した映画監督が発明家となり、やがて東北大震災のがれき処理にかかわる。その数奇な人生には、驚かされるばかりだ。(取材・文:壬生智裕)
曾根監督の作品も上映される特集上映「生きつづけるロマンポルノ」は渋谷ユーロスペースで開催中