特撮少年の永遠マドンナ水野久美!苦難の半生明かすも「特撮ものをやって良かった」
映画『マタンゴ』の妖艶な悪女、『怪獣大戦争』で地球人との悲恋に揺れるX星人の女スパイ・ミス波川役などで特撮ファンに強烈なインパクトを残す「永遠の特撮ヒロイン」水野久美が、書籍「女優 水野久美」の発売を受け半生を語った。
自伝内で語られる水野の半生は、平たんなものではない。その苦難のエピソードは「女遊びの激しい夫の子どもを産みたくないと思ったのか、母親が流産しようと階段から飛び降り、そのショックで7か月半で生まれ落ちた」「幼少時代は酒乱の父に悩まされた」「松竹で女優デビュー作を撮ったにもかかわらず、行き違いで東宝と専属契約したことから 『義理人情を欠く超ドライ娘』とバッシングを受けた」「東宝で『(お人形さんのような)主役はいりません。(個性を出せるような)準主役で結構』とコメントしたら、本当に主役が来なくなった」などさまざまだ。
そんな半生を「誤解されることも多かったけど、いつかわかってくださるときが来ると思ってやってきました」と振り返る水野。竹を割ったような彼女の姉御肌の性格は、若いスタッフや後輩たちから愛された様子。東宝を退社した後はテレビに活躍の場を移し、現役女優として現在も幅広い役をこなす。彼女の女優人生を貫くのは、「とにかく面白い芝居がしたい」という演技者としてのあくなき探究心だ。
「わたしはどちらかというと、役の中に入りこみたいタイプ。自分で役をつくる過程が楽しいし、徹底的にやった方が監督さんにも喜んでもらえるから」と語る水野。自身、最も好きな映画に挙げる『マタンゴ』と『怪獣大戦争』における彼女のビジュアルは、目力のある切れ長のまなざし、ぽってりとした真っ赤な唇などが印象的だったが「(水野の所属当時の)東宝は、みんな自分でメイクをしていたので、いろいろと研究したんです。『マタンゴ』のときは、アイシャドーをグリーンにしたり。特撮ものはいろいろと工夫できて面白かったですね」と振り返る。
『ゴジラ』『ガメラ』シリーズを手掛けた大森一樹、金子修介、手塚昌明ら一流監督に「初恋は水野久美さん」と言わしめたように、その美しさに心奪われた当時の子どもたちにとって、彼女は永遠のマドンナだ。「あれから何十年もたっているのにビックリですよね。若いころに特撮ものをやって良かった。今だに皆さんの心に残っているんだから、わたしは本当に幸せですよ」と笑顔を見せた。(取材・文:壬生智裕)
書籍「女優 水野久美」は洋泉社より発売中(税込み:2,940円)