氷河がこれほど解けていた?地球の温暖化に迫ったドキュメンタリーの映像が圧巻!
今年のサンダンス映画祭で撮影賞を獲得した話題のドキュメンタリー作品『チェイシング・アイス(原題) / Chasing Ice』について、写真家ジェームズ・バログが語った。
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同作は、ナショナル・ジオグラフィックの写真家として活躍するジェームズ・バログが、コマを落とした低速度カメラを、極寒の地グリーンランド、アイスランド、アラスカなどに25台も設置し、半年間ずつの撮影を数年間にわたって記録し、氷河の消失の証拠を捉えながら、地球温暖化の深刻さに迫ったドキュメンタリー作品。監督は、ジェフ・オーロウスキーがメガホンを取っている。
つい最近、アメリカの東海岸でハリケーン・サンディが猛威をふるったが、地球温暖化のために水位が上がっていたことで、より大きな被害を招いたことについて、「特に被害の大きかったニューヨーク州、コネチカット州、ニュージャージー州が、この災害で苦しんでいたことを悲しく思っている。長い間、問題視されていた水位の上昇と氷河が解け始めていることは同じことで、このような形で被害が出るのは恐ろしいことなんだ。でも、これまで地球の観測をリサーチしてきた人々にとっては、このような無秩序な天候が起きることは、だいぶ前から予測していた」と、世界中で極端な天候による災害が頻繁に起きていることは、前から認識があったことを主張した。
撮影中に、極寒の地に設置された低速度カメラが機能していなかった時もあったそうだ。「単にアラスカで使用していた低速度カメラが、機能しなかったことでがっかりしただけでなく、翌週にはグリーンランドで約10万ドルもの予算を費やし、僕ら6人のスタッフで12台のカメラを設置する予定だったんだ。そのため、カメラが機能するかわからない状態で、行くか、それとも中止すべきかの決断に迫られたんだ」。その後ジェームズは、修理したカメラをグリーンランドに設置することになったが、「最も大変だったのは、予算の捻出だった。この5年半の低速度カメラの撮影は、いつもどうやってこの撮影費用を払うか考えていた……。決して、一か所から定期的な予算が捻出できたわけではなかったからね」と苦労を明かした。
極寒の地の撮影について「実は、僕はこのような極寒の地が大好きなんだ。当然、しっかりと厚着し、トレーニングをして、さらに精神を整えた状態で行かなければいけない。当然、現場でのミスは許されない(生死にかかわってくるからだ)。ただ、そのようなことをしっかり学べば、楽しい場所にも変わるんだ。光の当たり方は素晴らしいし、音の鳴り方も全く違う。この世界の中で、最も壮大な体験ができる場所だ。それに、これまで何度か同じ作業を繰り返す撮影だったにもかかわらず、半年ずつ毎回カメラを設置に行く度に、新たな変化を見ることができたんだ」と自然の力に魅了されたようだ。
映画内では、マンハッタンとほぼ同じ大きさの氷河が崩れ落ちていく瞬間を捉えた圧巻のシーンが収められている。地球温暖化と言葉で表現されても、現実的には理解に乏しかった我々にとって、この映画は深刻な時期に直面していることを警告している。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)