妻夫木聡、「いい人」と褒められて照れ笑い
山田洋次監督が小津安二郎監督の名作『東京物語』にオマージュをささげた映画『東京家族』の初日舞台あいさつが19日に行われ、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、林家正蔵、妻夫木聡、山田監督が登壇し、撮影秘話などを語った。
吉行が息子を演じた妻夫木について「撮影中、一生懸命話しかけてくれて、いい人だなと。共通の話題がなくて大変だったと思う。ある日『入浴剤は何を使っているんですか?』と突然聞かれて『この間「よみがえれ、赤ちゃん肌」という商品を使ったの』と答えたけど、きっと(妻夫木は)頭の中で『(よみがえるのは)無理だよ』と思ったでしょうね」とおどけてコメント。それを受けて隣の妻夫木が「そんなこと思ってないですよ、お母さん!」と懸命に否定するなど、二人のほのぼのとしたやりとりに会場は笑いに包まれた。
また、夏川は「現場では山田監督から多々怒られました。わたしじゃないところで監督が何か言われているときでも、自分に言われているような気持ちで挑んでいました」と山田組での撮影を振り返った。すると橋爪が「山田監督はにこやかな優しい顔をしているでしょ? でも、現場でふっと沈黙して、すごく人相が悪くなるときがある。役者が『(原因は)オレかな?』って。怖いよね!」などと当時のエピソードを率直に語り、山田監督を苦笑いさせていた。
本作は、瀬戸内海の小島で暮らす老夫婦が、子どもたちに会うために上京する旅を通して、家族の絆と別れ、希望を優しく描くファミリー・ドラマ。2月7日から開催予定の第63回ベルリン映画祭で『東京物語』と共に上映されることが決まっている。そのほか3月17日から開催される第37回香港国際映画祭での上映、台湾、香港、シンガポールでの配給も決定。現在はドイツ、スイス、フランス、北米、インド、韓国から配給オファーが来ている状況だという。
東日本大震災の影響で約1年製作が延期され、脚本も見直された本作。山田監督は「震災が起きて、絆という言葉が妙にもてはやされたけど、それはみんなが家族についてもう一度考えるきっかけになったからだと思う。それを念頭に置きながら撮影を開始した。延期するときはずいぶん迷ったけど、今はこれで良かったと思っている」と真摯(しんし)に語っていた。(古河優)
映画『東京家族』は全国公開中