レオス・カラックス監督、最新作は「人生を凝縮したSF世界」 14年ぶりの来日会見で明かす
28日、約14年ぶりの新作となる『ホーリー・モーターズ』のプロモーションで来日中のレオス・カラックス監督が、昨日のトークイベントに続き、渋谷で行われた完成披露記者会見に登場。「時間はかかったが、わたしは常に映画という『島』にいた」と語り、スクリーンへの完全復活をアピールした。
煙草を片手にひょうひょうと現れたカラックスはまず、約14年間、長編映画から遠ざかっていたことに対して言及。「本当はフランスではなく、別の国、別の言語で映画を撮りたいと思っていたが、かなわなかった。しかし、わたし自身が映画を撮らない状態に限界を感じていたので、急きょ、舞台をパリにした」と語り、主演を彼の分身ともいえるドニ・ラヴァンにオファーしたことに対し「彼には最低限の説明しかいらない。彼なら自分の空想力を規制することなく映画が撮れると思った」と経緯を明かした。
そして、ついに完成を迎えた本作について「最初に浮かんだのは、人生から人生を渡り歩く『SF世界』のイメージ。SFは『現実とはなんだ?』というように、必ず何か問いかけてくる。そこからいろんなものが生まれてくると感じたんだ」と今回の着想について語ると、「人は自分であり続けることの『疲労』と、自分を新たにつくり出していく『変化』、この狭間で生きている」と映画の根底に込められたメッセージを言葉で表現した。
ちなみに本作は、「カイエ・デュ・シネマ」誌2012年度ベストワン選出、2012年ロサンゼルス映画批評家協会賞の外国語映画賞を受賞するなど、ブランクを感じさせない完成度の高さは証明済み。「人は年を取るのではない、人生を移りゆくもの」。このカラックスの言葉がこの映画のすべてを物語る。
大企業の社長、殺人者、物乞い、怪物など、依頼された人物に成りきることを職業とするオスカー氏。リムジンの運転手セリーヌだけを友に持つ彼はいった何者なのか? パリを舞台に、ある男の謎の行動を描いた異色ドラマ。カラックス映画に欠かせないドニ・ラヴァンが謎の主人公をエキセントリックに演じるほか、世界の歌姫カイリー・ミノーグが劇中、美声を披露するシーンも必見である。(取材・文:坂田正樹)
映画『ホーリー・モーターズ』は4月、ユーロスペースほか全国順次公開