井浦新、若松孝二監督が望んでいた…主演男優賞に感無量
「第22回日本映画プロフェッショナル大賞」授賞式が16日、テアトル新宿で開催され、入江悠監督の『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』が作品賞に輝いた。また故・若松孝二監督が監督賞を受賞した。
監督賞を受賞した若松監督は、昨年10月17日に急逝。監督の代理で賞状を受け取った俳優の井浦新は「若松監督の作品と共に、テアトル新宿には何度も訪れさせていただきました。僕の中でも間違いなく聖地だと思っています。何よりもこのテアトル新宿で若松監督がこのような賞をいただいたというのが、価値のあることだと思います」とコメントした。
また井浦自身も、若松監督が手掛けた『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』で主演男優賞を獲得。「若松監督は常々、三島由紀夫の役で、僕に主演男優賞を取らせたいと言ってくださっていました」という井浦は、「監督にゆかりのある作品で主演男優賞をもらえ、監督に報いることができたとうれしく思っています」と笑顔を見せた。
そのほか、耐震性の問題から今年の3月31日に閉館した映画館「銀座シネパトス」が特別賞を受賞。この日、劇場のあった場所に寄ってきたという同館の元支配人・鈴木伸英氏は、「(劇場のあった)地下街では食堂と飲み屋だけしか営業をしていなかった。二つあった時計塔の時計も止まっていて、寂しい気持ちになりました」とコメント。しかし「こうやって注目していただいてありがたい。劇場がなくなってみて改めて、銀座シネパトスは自由な場所だったなと思い知らされました。これからは残された(ヒューマックスシネマが運営する)四つのサイト(劇場)で興行の可能性を追求していきたい」と決意を語った。
そして作品賞を受賞した入江監督は「僕たちはインディーズから始まったので、プロフェッショナルからは一番遠いなと思っていた。それなのに作品賞をいただけるのはすごいなと思った」としみじみ。さらに今回の受賞作にインディーズ作品が並び、そして独立プロを率いた若松監督が監督賞であったことに触れ、「インディーズが日本映画プロフェッショナル大賞でいいじゃないか」と晴れやかにコメント。会場に駆け付けた『サイタマノラッパー』のクルーたちから「いいぞ!」と喝采を浴びていた。(取材・文:壬生智裕)
第22回 日本映画プロフェッショナル大賞は以下の通り
個人賞
作品賞 『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(入江悠監督)
監督賞 若松孝二監督(『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』)
主演女優賞 前田敦子(『苦役列車』)
主演男優賞 井浦新(『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』『かぞくのくに』)
新人監督賞 三宅唱(『Playback』)
新進プロデューサー賞 杉野希妃(『おだやかな日常』)
特別賞 大谷直子(『希望の国』、及び長年の功績に対して)
特別賞 銀座シネパトス(長年の功績に対して)
ベストテン
1『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(入江悠監督)
2『アウトレイジ ビヨンド』(北野武監督)
3『愛と誠』(三池崇史監督)
4『おだやかな日常』(内田伸輝監督)
5『ライク・サムワン・イン・ラブ』(アッバス・キアロスタミ監督)
6『ヒミズ』(園子温監督)
7『黄金を抱いて翔べ』(井筒和幸監督)
8『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(若松孝二監督)
9『この空の花 長岡花火物語』(大林宣彦監督)
10『おおかみこどもの雨と雪』(細田守監督)