『ぐるりのこと。』橋口監督の新作は全身タイツ愛好家のコメディー!初日は立ち見の超満員!
映画『ぐるりのこと。』の橋口亮輔監督最新作『ゼンタイ』の初日舞台あいさつが8月31日、テアトル新宿で行われ、全身タイツ姿のキャストを含む35名が橋口監督とステージに勢ぞろいした。
全身タイツ隊!橋口監督は迷彩柄~『ゼンタイ』初日フォトギャラリー
俳優事務所アプレが主催するワークショップから生まれた本作。俳優のエチュード(即興)を基に作られた6編のエピソードに、橋口監督がかねてより温めていた全身タイツ=ゼンタイ愛好家を絡めた異色のオムニバス・コメディーだ。
撮影期間3日、制作費220万円という低予算映画ながら前評判も高く、9月26日から開幕となる第32回バンクーバー国際映画祭への正式出品も決定。橋口監督も「日本発祥の文化である全身タイツが世界の人にどう見られるのか楽しみです」と期待に胸を弾ませた。
劇場前では、橋口監督自らが全身タイツに身を包み、全身タイツ隊と一緒に道行く人にチラシ配りを敢行。その甲斐あって、会場は立ち見の出る大盛況となった。その全身タイツ姿のままステージに登壇した橋口監督は「僕は20年、映画をやっていますけど、初日で緊張したのは初めて」。
さらに、この日の司会を務めたドラァグクイーンのマーガレットから「わたしは橋口さんの映画は全部観ているけど、『ハッシュ!』のときには、女に対する意地悪さがあったじゃない。でもこの映画では、慈愛に満ちた目線に変わった感じがするのよね」と評されると、「それって年取ったってこと?」とおどけてみせる橋口監督。それを踏まえてマーガレットは「そういった視線の違いも味わっていただければ」と客席に呼び掛けた。
フェティッシュアイテムとして世界中の愛好家たちから注目を浴びるゼンタイ。全身タイツを身にまとうことで、性別や美醜、職業といったしがらみから自由になれるのだとか。橋口監督も「(ゼンタイを着た出演者の中には)踊り出す人もいたし、逆に固まってしまう人もいた。たかが布一枚だと思うかもしれませんが、人間の内面にいろんな作用をもたらすのが面白かった」と述懐。
さらに「全身タイツを脱いだときに、もっとも他人に見せたくない顔、しかし、とてもいい表情をしていたんです。布で覆っているにもかかわらず、自分が出てしまうのが奥深いなと思いました」と不思議な効用にしみじみしていた。(取材・文:壬生智裕)
映画『ゼンタイ』はテアトル新宿にて公開中