劇中の子どもたちがリアルに成長!『ひかりのまち』ウィンターボトム監督が5年かけて撮った新作を語る
映画『ひかりのまち』などで知られるイギリス人監督マイケル・ウィンターボトムが電話インタビューに応じ、新作『いとしきエブリデイ』を5年という歳月をかけて撮影した理由を語った。本作は、刑務所にいる父親(ジョン・シム)の帰りを待つ幼い4兄妹と母親(シャーリー・ヘンダーソン)の5年間を、イギリスの美しい風景とマイケル・ナイマンの叙情あふれる音楽と共に映し出した感動作だ。
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本作に出てくる刑務所、家族が暮らす家、子どもたちが通う学校は全てが本物で、ウィンターボトム監督は自身が見いだした実の4兄妹のもとを、俳優たちと共に5年にわたって年に2度ほど訪れて撮影を行った。その結果、劇中で流れる5年間は実時間に基づいたものとなり、本作では、フィクション映画で4兄妹の本物の成長を見るという極めてまれな体験ができる。
「フィクション映画でストレスがたまるのは、時間の経過を扱うとき」と語るウィンターボトム監督は、「時の流れが重要な位置を占める作品では、大長編を撮るか、技巧を使ってごまかすしかなかった。だからこそ、もっと偽りのない自然な方法で、時間が人々や物語、特に子どもたちにどう影響するのかを描けたら面白いと思った」と本作におけるモチベーションを明かす。
ジョン、シャーリー、ナイマンとタッグを組んだ『ひかりのまち』でも「家族」を描いているウィンターボトム監督は、「家族は映画で描くべき題材」と断言。本作で離れ離れの家族を取り上げた理由については「家族が一緒にいるさまを描いた映画が多いけど、最近はバラバラになっている家族も多い。離婚したり、刑務所に入ったり……。そういった意味で別離は、現実として多くの人々が抱えている問題だ」と説明した。
ちなみにウィンターボトム監督のお気に入りのシーンは、家族が浜辺を一緒に歩く終盤のシーンとのこと。そこには「刑務所や学校といった制限された空間とは対照的な広い世界。彼らは一緒にいて、自由で未来は開けている」という思いが込められている。ウィンターボトム監督は、ささやかだが一瞬として同じではない5年間の日々を積み重ねることで、家族の愛の強さと時間の尊さを浮き彫りにすることに成功したといえるだろう。(編集部・市川遥)
映画『いとしきエブリデイ』は11月9日よりヒューマントラストシネマ有楽町にて公開