監督と主演女優が語るカンヌ国際映画祭パルムドール作品とは?
第51回ニューヨーク映画祭(N.Y.F.F'51)で上映された『アデル、ブルーは熱い色 / Blue Is the Warmest Color』について、アブデラティフ・ケシシュ監督が、主演のアデル・エグザルコプロスと共に語った。
同作は、15歳の思春期の少女アデル(エグザルコプロス)が、ボーイフレンドとのデートの最中に、青い髪の魅力的な女性エマ(レア・セドゥ)に惹(ひ)かれ、エマとの運命的な出会いから大人の階段を上り始めていく過程を描いた秀作。アブデラティフ・ケシシュがメガホンを取り、脚本も共同執筆した。
3時間の長編作について「この映画の長尺は、僕の呼吸やリズム感覚に合わせた長さだ。前作までは本来の映画の型にはまった構成をしていた気がするが、本作ではより自然なリズムを図りながら編集した。でも、ディレクターズカットに比べて45分も短くなっている」と語る通り、映画内では二人の女優の感情が溢れ出るような演出が施されている。
即興的な演出についてアデルは「アブデラティフ監督は、わたしたちにゆっくり演技できる時間を与えてくれて、(感情の起伏の激しい役を)演じるエネルギーを蓄えられた。それに、全てのことについて監督と話し合い、即興的な演技はあくまでキャラクターに沿った上で行われた」と明かした。
エマとアデルが最初に出会うシーンの演出について「このシーンを演出する上で、まずどの音楽が当てはまるか念頭に入れていた。最初に選んだ曲は、俳優の感情を引き出すうえで、うまくいかなかった。だが、偶然にも音楽を担当したエリーゼ・ルゲルンのメランコリーな曲が合っていて、その曲を使用することで、感情を強調することができた」と答えた。アクセントのある曲とカメラのアングルが、セックスシーンよりもある意味、より魅力的なシークエンスを作り上げている。
キャスティングについて「エマ役は、あまり多くの俳優を見ずにキャスティングした 。俳優の性格やこれまでの人生の体験がどのようにキャラクターに投影できるかで決めた。一方、アデル役は、さまざまなプロ俳優を見てきたが、アデル・エグザルコプロスに出会ってすぐに彼女だと思った」と確信した通り、アデルの熱演が3時間という長尺でも最後まで観客を惹き付けている。
映画は、2人の女優が繰り広げる感情むき出しの演技と、クローズアップを多用した演出が、3時間という長尺の映画を全く飽きさせることのない映画に仕上げたパルムドールにふさわしい傑作だ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)