手品師ペン&テラーが描いた画家フェルメールの絵画の謎に迫った新作とは?
第51回ニューヨーク映画祭(N.Y.F.F'51)に出展された新作『ティムズ・フェルメール(原題) / Tim's Vermeer』について、テラー監督、プロデューサーのペン・ジレット、そして発明家/画家のティム・ジェニソンが語った。
本作は、ソフトウェア会社、Newtekの創業者で発明家のティム・ジェニソンが、17世紀の画家フェルメールのリアルで繊細な絵画は、当時すでに存在していたレンズと鏡を使用した“カメラオブスキュラ”の技術に頼ったものという仮説を立て、自らその仮説を証明するためにフェルメールの絵を模写するというドキュメンタリー作品。監督は二人組の手品師ペン&テラーの、テラーがメガホンを取り、ペン(・ジレット)が製作を担当した。
ティムの友人ペンが関わったのは「ティムは長年の友人で、今から5年前、彼と夕食をとっていた際に彼がこのフェルメールの話をしてきたんだ。彼はこの映画にも含まれているビデオで撮影したものも見せてくれて、全くフェルメールのことを知らなかった僕は、この発想(仮説)に驚かされた。そこで彼に今やっていることを中断し、この映画を製作しないか提案したんだ」と語った。
フェルメールの絵についてティムは「当時カメラなどない時代に、フェルメールがなぜこれほど写真のように繊細な絵を描けたのか、僕はおそらく10年ぐらいは考えていたと思う。しばらくして、レンズと鏡の使用した“カメラオブスキュラ”の技術で、対象となる絵の色や形が完璧に模写ができることがわかり、フェルメールの絵にもその証拠となるようなアプローチが見られた。それから、この“カメラオブスキュラ”の技術でフェルメールの絵を模写した人が居るかをグーグルで検索し、誰もいなかったことから自ら実験することになった」と明かした。
この映画を製作したことで、アート界から批判はあったのか。「実は、このニューヨーク映画祭がほぼ最初の観客だ。ただ、今作に出演している芸術家デイヴィッド・ホックニーが執筆した『秘密の知識-巨匠も用いた知られざる技術の解明-』が出版された時も、かなりヒドい反発があったようだ。今のところ、まだ批判を受けていないし、ティムを見ればわかると思うが、彼は対立的ではなく、対立するために今作を描いたわけでもない。彼はあくまで純粋にフェルメールの絵が好きなんだよ」とペンが答えた。
映画は、議論の余地のある作品ではあるが、興味深い視点であることには変わりない。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)