安倍首相にDVD送った!ホームレスに転落する若者描いた『東京難民』監督が有言実行
中村蒼が主演を務めた映画『東京難民』の試写会イベントが27日、月島のブロードメディアスタジオ試写室で行われ、メガホンを取った佐々部清監督が出席した。普通の大学生が父親の失踪をきっかけに大学を除籍となり、職を転々としたのちにホームレスにまで身を落とすさまを描く本作。佐々部監督はこの日、安倍晋三首相に本作のDVDを送ったことを明かした。この日は原作者の福澤徹三、そして若者の格差・労働問題に取り組むNPO法人POSSEの川村遼平事務局長も来場した。
昨年11月に行われたマスコミ向け試写会で「安倍首相に本作のDVDを送る」と宣言していた佐々部監督。この日のイベントでは「安倍首相に観てもらいたかったので、DVDは送り、この国のファーストレディーである(安倍)昭恵夫人からコメントをいただきました」と報告。コメントの詳細は明らかにしなかったが、「オリンピックだけでなく、こちらの問題にも目を向けてほしいなと思います」と要望を付け加える。
一方、本作を観たという川村事務局長は「ものすごくリアルな物語だなと思いました。身近で起きてもおかしくない」と太鼓判。それを受けて佐々部監督は、原作が書かれてから数年が経過していることに触れ「この映画を世に出したときに、古いことにならないかと危惧もあった。でも映画として、この時代にしかできないことをやりたかった。明日は我が身という若者ばかりでなく、明日は我が子と思うような中高年にも発信したいなと思った」と本作に対する思いを語った。
昨年末から今年の年始にかけて、渋谷区職員が区立宮下公園からテント暮らしのホームレスを閉め出し、極寒の中に追い出すといった事件が起きた。それを踏まえて「あの寒いときに温かいものを持っていくのではなく、出ていけとやるのはどうなのよと思った」と行政に対しても疑問を呈した佐々部監督。それを受けた福澤も「(世の中の)状況は悪くなる一方かな、という気がしている。若者だけでなく、中高年でも将来は不安定ですから。僕ができるのは小説を作ること。幸い、若い人が読んでくれているのですが、小説を書くことで少しでも手助けできればと思う」と決意を明かしていた。(取材・文:壬生智裕)
映画『東京難民』は2月22日より全国公開