緒形直人と南果歩、家族円満の秘訣として「大切なのは……」
モントリオール世界映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞した『利休にたずねよ』の田中光敏監督が、さだまさしの原作を映画化した『サクラサク』。本作で共演した緒形直人と南果歩が、撮影の舞台裏と家族円満を保つ秘訣(ひけつ)について語った。
本作は、仕事一筋の会社員・大崎俊介が父の認知症をきっかけに冷えきった家族関係に気付いて危機感を抱き、妻と子どもたちと共に父のふるさとへ記憶をたどる旅に出発するロードムービー。撮影は3週間に及び、脚本通りに撮影していく順撮りスタイルで行われた。序盤1週間ほどで撮影された都内のシーンは心を閉ざした夫婦の殺伐とした場面が多く、「直人君と目が合うことなかったね」と妻の昭子を演じた南は笑い、俊介を演じた緒形も「そうでしたね」と振り返った。
家族が旅立つ後半の撮影では、撮影隊は長野と福井へ移動。移動から移動が続くキャラバンだったと二人はロードムービーならではの苦労をのぞかせたが、空き時間では息子役の矢野聖人や娘役の美山加恋、俊介の父役の藤竜也らと共に和気あいあいと、その土地ならではのおいしいものや観光を楽しんだとのこと。先頭に立ってみんなをまとめたのが南だが、それが映画の中で家族としての存在感につながったというのが緒形の実感。「果歩さんの力は大きかったと思います」と話した。
さらに、本作のテーマである家族の再生に通じる夫婦や家族円満を保つ秘訣(ひけつ)を、良き家庭人でもある緒形と南は「思いやりの言葉や感謝の言葉を掛け合うこと」「家の外に出ること」と回答。意外にも、自宅というのは気が落ち着ける場所だがいろいろなしがらみもあるため、そこから解放することも必要であると。
そんな家族関係の問題と認知症を取り上げている本作だが絶望的な雰囲気はない。二人はその理由を、監督が持っている温かさによるものだと分析するが、緒形と南ほか、藤竜也ら多くの実力派キャストとベテランスタッフが監督の思いを共有することによって、希望に満ちた作品に仕上がったのだろう。(取材・文:枚岡由里香)
映画『サクラサク』は全国公開中